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”あの頃、その時そして今”  No.7  「医薬営業のIT化の始まり」 - 村岡 美代子(東京)

医薬営業向けIT化の始まり

皆様、ごきげんよう! 私は退職してから早10年が経とうとしています。会社の10年は長かったですが、退職後の10年はあっという間でした。

さて、昨今のコンピューターや通信技術の進歩はIT革命を起こし、パソコン、携帯、スマホ、タブレット端末と生活の中になくてはならない存在になってきました。 最近ではこうしたITの進化に伴い大量に収集したデータを活用するビッグデータが注目を集めています。

私は医薬事業部企画管理課に配属になり医薬営業売上(KB)データ作成の仕事をしてまいりました。コンピューターの進歩と深く繋がりのある仕事でしたが、これ程までに進化するとは思いもよりませんでした。この度、業務上関わった医薬営業向け【JD-NETオンラインKB照会】(以下、JD照会と略します)について、振り返ってみたいと思います。

これは初めてコンピューターネットワークを使ったもので医薬のIT化の始まりでした。 医薬営業の方々には懐かしく思い出される方もいらっしゃることと思います。  

 

JD照会導入

JD照会とは1990年に医薬の売上速報をパソコンで初めて見られるようにしたものです。ネットワークを使い毎日全国の支店、営業所、課長に届けられました。当時、当月内の売上(KB)進捗状況を知るには営業担当者(MR)が卸に聞き、課長がMRからの報告を集計するということが行われていました。

JD照会で月内の日次売上が判れば卸に聞かなくても良くなります。これは営業担当者が本来の営業活動に専念できるようにという目的で作りました。 これを可能にしたのは日本製薬工業協会が「JD-NET協会」を作り、1988年、毎日卸から売り上げデータを電送する業界VAN「JD-NET」を稼働させたことと、この頃コンピューターとパソコンを繋ぐ社内ネットワークができたことによります。

 

*JD照会が導入されるまでの売上データ収集

医薬の製品は製薬会社から卸へ、卸から得意先(医療機関・薬局等)に届けられます。 医薬では下記のように卸から得意先に売れたものが営業の売上(KB*)となります。

ファイザー・売上(SALES) ⇒  卸・売上(KB)  ⇒  得意先(医療機関・薬局等)

*卸の倉庫から離れたということで「クラバナレKuraBanare」KBという

医薬品は卸が得意先に売っているので、当社ではいくら売れたかわかりません。そこで卸から得意先に売った伝票を貰い営業の売上(KB)を計算します。

この業界VAN「JD-NET」ができるまでは、卸から月末締めの伝票を翌月の初めに貰い、手作業で伝票1枚1枚にコード付けし、それを電算処理できるカードにパンチし、やっと準備が整います。伝票を月中で貰う、磁気テープで貰う等、そして業界統一商品コードが導入されたりもしましたが、最終的には月末締後「ヨーイドン」でデータ作りが始まります。アルバイトを動員し出来上がるのは翌月10日頃でした。アナログでのデータ作りでした。

 

*アナログからデジタルデータ収集へ

ところが毎日データが送られてくる電子化つまりデジタル化に変わるのです。当時としては画期的な事でした。 そうは言ってもこの業界VAN「JD-NET」を運用開始するまでには卸とのデータ授受に関する交渉、卸と当社の得意先コードを照合する仕組みを卸ごとに作らなければなりません。 当時卸は100社余りあり本社医薬営業と経営情報部(IT統括部)、支店関係各位と協力し合い四苦八苦しながら数年かけて準備しました。またこれをフォローする内勤業務もアナログデータ処理からデジタルデータ処理に切替える必要がありました。 製薬業界の画期的な取り組みに卸、製薬会社両者とも導入時は大変苦労しました。

 

*社内ネットワーク開通

一方この頃、NTTはコンピューターネットワークの通信網整備に動き始めていました。当社でも1990年、専用回線(オンライン回線)を引き、社内のネットワークが本社、名古屋発送センター、支店、営業所すべての事業所に開通しました。これで支店、営業所の課長はパソコンで売上(KB)が見られます。しかし、当時は駐在課長制度があり、課長宅まで専用回線は引けないので、非常に遅いのですがNTT電話回線で対応するようにしました。 これで全国の課長全員に売上速報を届ける手段が整いました。

 

*「JD照会」スタートとその後の変化

1990年、当社では卸のデータ受信体制がほぼ整い、社内ネットワーク開通と同時に「JD照会」の配信を始めました。「支店、営業所、課、MR毎の主力製品と合計金額」、そして「卸毎の主力製品と合計金額」の単純なものでしたが、日々更新される売上(KB)がリアルタイムで分かります。こうして「JD照会」が始動することで仕事が省力化、合理化されていきました。

営業では当月内の売上(KB)の進捗を、MRは卸に聞かずとも、課長はMRに聞かずともパソコンで分かります。同時に卸担当者も卸の売上(KB)が分かるようになりました。営業担当者の内勤業務が減り、本来の営業活動に時間が使えるようになりました。 これは営業支援の為に開発したシステムですが、内勤業務においても毎日電送されるデータに対処するため、月初にまとめて行っていた業務をパソコン画面から日々入力できるオンライン「REST(レスト)」に切替えました。日々分散処理ができアルバイト要員は必要なくなり合理化できたと共に、内勤業務においてもIT化の始まりでした。

営業課長も支店内勤者も初めてのパソコン操作に戸惑いもありましたが、内勤者は「JD照会」の使い方や集計表作成、資料作成等で営業課長を補佐し、ITスキルが向上していきました。 しかし、この頃のパソコンやプリンター等の機器類は大きく、動きが遅い。オンライン通信速度も遅く、コストも高い。IT環境も始まったばかりで、決して使い易いものではありませんでした。駐在課長宅には、宣材物、サービス品等荷物がたくさん届けられます。パソコン、プリンター、モデムとまた荷物を増やす厄介者ではなかったでしょうか。

一方、製薬業界のVAN「JD-NET」は業界情報化の基盤となり活用の場を広げて行きました。アルトマーク社(注)の施設情報やドクター情報のコードを介在させることにより各製薬会社が医療機関やドクターの情報を製薬会社間で共有したり、合併時の得意先情報がスムーズに行われたり、近年、一つの製品を他社と一緒に販売する協業(コ・プロモーション)が増えています。このような時も製薬会社間でこの業界VAN「JD-NET」が基になり販売データを共有できる仕組みに繋がっています。

こうして「JD照会」導入をきっかけとして、医薬のIT化が小さな一歩を踏み出しました。当時、そのような意識はありませんでしたが今振り返ると最初の一歩、そして未来への可能性を秘めた一歩だったと思います。

 

*JD照会の終了、そしてFFA導入

医薬営業IT化の波は「JD照会」から1994年に営業支援システム「FFA」ができ、営業全員にノートパソコンを配布しました。KB実績照会、稼働情報等が搭載され持ち運びもでき、どこでも使え便利なものになりました。「JD照会」は営業用には業務を終了しましたが内勤用として引き続き使われていました。 「FFA」はその後1997年「SIS」にバージョンアップし経費精算、日報等が追加され、更に1998年、本社ホストコンピューター入替えにより営業には「Voyager(ボイジャー)」が、内勤には「ACM-OLAP」が導入されました。「Voyager(ボイジャー)」はドクター情報等を追加し更に多機能になりました。この時点で内勤用として使われていた「JD照会」は終了しました。 そして「Voyager(ボイジャー)」も2011年に役目を終え、クラウド対応の新しいシステム「PLANET(プラネット)」に引き継がれていると言うことです。

(注)アルトマーク社 医療機関/薬局等の施設や医者の登録、変更修正情報を管理するデーターベースを作成している会社

コメント

コメント一覧 (3件)

  • 超、超アナログ人間で今でもガラケーのみですが不自由ナシ、生活はシンプルです。ハイテクの進化には驚きますが地球の自然、文化も変わらない所も魅力。変化あり、何もなし、どちらもGood。それにしてもKBは懐かしい。

  • 村岡さん
    社友会で久しぶりにお目にかかれて、うれしい限りです。
    懐かしい記事ですね。本当にITはすごいスピードで浸透し変革しました。
    私は81年入社時、毎晩卸さんで手書き伝票を売り上げノートに転記してました。
    むしろ売り上げに対する喜びや情熱は、アナログの時の方が良かったのかもしれませんね。先輩方も個性的な方が多かったですね。
    第二の人生をお楽しみに下さい。   若輩の祐川より。

  • 祐川さん
    先日は社友会で思いがけずお会いでき、懐かしかったです。
    お互いOB、OGになってしまい時の流れを感じます。
    私はハヤバヤ引退してしまいましたが、
    新しいお仕事されているとのこと、お体を大切にご活躍ください。

                           村岡

steruo22271f@kg7.so-net.ne.jp へ返信する コメントをキャンセル

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